福島隆史のCSRエピソード | 株式会社サステナビリティ会計事務所(SusA)

CSRコンサルタント福島隆史が、CSR報告書の読み方や考え方、 重要な用語の説明やエピソードを毎日更新します。 企業のCSRご担当者の方や、ステークホルダーの皆さまがCSR報告書について知見を深めていただければ幸いです。

*

ガバナンス報告書の範囲を逸脱してよい?

   

日本の上場企業は、
ガバナンス報告書を証券取引所に提出しています。
そしてそのガバナンス報告書は、
誰でも見ることができるようになっています。

私は今まで、
CSR報告書に掲載するガバナンスの章の内容は、
ガバナンス報告書を逸脱しない範囲で取りまとめ、
掲載するのがよかろうと思い、
そのようにサポートしてきましたし、
そのように考える企業ご担当者の方も圧倒的多数であることから、、
概ね今もそうしています。

たとえば、、想像してみてください。
ガバナンス全般の網羅的取りまとめ資料としてのガバナンス報告書には、
CSR方針、CSR委員会、CSR報告書などのことが
ちょこっと数行、書いてあるだけなのに、
CSR報告書のガバナンスの章を見ると、
ガバナンスの構造全体をもって、
CSRへの取り組み大々的にやってます、と見せてしまうようなことって、
なんだかなぁ・・と思ってしまいませんか。

右を向けば右にいらっしゃる方々向けの顔をつくり、、
左を向けば左にいらっしゃる方々向けの顔をつくるなんて、
どうなのかなぁ、、、と。
そういうのって、二枚舌、というかもしれません。
信用を得るがために取り組んでいるCSRとして、
最もやってはいけないこと、ですよね。

加えて、ガバナンス報告書って、
企業内の誰が書くのがふさわしいのか、そもそも非常に悩ましいところ。
経営層のクオリティそのものを語るわけですから、
本来は経営層のお偉いさんに書いてもらわないといけないんだけれども、
でも書いてはくれないから、
社内の誰かが、その職務分掌の範囲を超えて代筆してるのが実態です。
そんなふうに苦難を経て産みおとされたガバナンス報告書ですから、
CSR報告書でガバナンスを説明する際、
それを最大限に利用しない手はありません。

ところが今年、、、
一部のわずかな内容についてではありますけれども、
ガバナンス報告書には記載がないのだけれども、
CSR報告書のガバナンスの章に追記した内容が発生しました。

取締役の「性別」についての記載です。

GRIガイドラインを参照してCSR報告書内容を検討している企業において、
2011年春、GRIガイドラインに3.1版が出て、
そこでガバナンス機関メンバーの性別を明記せよと改訂があったことから、
少々とってつけたような記述にはなるけれども、
取締役会メンバーの性別、書いておくか、
ってことになりました。

ガバナンス報告書には、
そんなこと証券取引所の所定様式、記載要領に求められていないので、
記載してはいません。

ところで今回、こうも簡単にガバナンス報告書から逸脱できるんだ。。
と、変な感想をもってしまったのが、、
私の正直な胸の内、です。

逸脱できるのであれば、
もっと大きな逸脱もありかな?

そもそもCSRが社内でうまく機能するかどうかなんて、
ガバナンスで決まってしまうといっていい。
経営層にその気が全くないのなら、
着飾ったCSR報告書を発行し、ご担当者がなんとかPDCAを回そうとしても、
どこまでいってもほぼ・・残念ながら無駄なこと、です。

そうであるから、、、ほんとは、、、
CSR報告書のガバナンスの章を読んで、
CSRを強力に推進しようとする息吹を感じられるかどうか、っていうことは、
GRIガイドラインの改訂有無にかかわらず、
非常に重要なことなのです。

ならばいっそガバナンス報告書との整合なんて気にしないで、
ガバナンスがCSRにおいていかに機能している状況にあるのか、
しっかり記述するよう努めるのがよいのではないかと、
考えるに至っています。

もちろん二枚舌はどこまでいってもよくないことなので、
CSR報告書のガバナンスの章に載せる内容が重要だと考えるならば、
ガバナンス報告書にも載せるようにすればよい、
それが最も素晴らしい情報開示のあり方・・、
ですよね。

 - 評価の高いCSR報告書

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